イベント報告
支える人のケア開催

「支える人のケア」開催
 (公財)静岡県労働者福祉基金協会ライフサポートセンターしずおか事業部中部事務所は12月7日(土)、静岡市葵区のALWFロッキーセンターで「支える人のケア」を実施しました(後援:静岡県、静岡市、(一社)静岡県労働者福祉協議会、静岡県労働金庫、全労済静岡県本部、生活協同組合ユーコープ)、静岡新聞、静岡放送。46人が参加されました。
 このセミナーは、通算3回目となるもので、ライフサポートセンターしずおかが受付している「暮らし何でも相談」の内容で、「心の悩み」が増加傾向である事から企画しました。今年度は初めて「心の悩み」がジャンル別統計で1位となっています(2位は法律問題)。
 第一部は、「あなたがまいってしまわないために」と題して静岡県立静岡がんセンター腫瘍精神科部長 松本 晃明先生による講演を行いました。以下講演の概略をご紹介します。
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講演する松本先生
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1.支える苦労
東日本大震災発生後岩手県に入り、静岡県のこころのケアチームの一員として活動しました。阪神淡路大震災をきっかけとして災害時のこころのケアの重要性が認識されるようになりましたが、東日本大震災では「支援者への支援」が重要だとの認識が広がりました。このように「支える人のケア」が大事な時代になっています。
今日支えている対象となる人は親、配偶者、子供、兄弟など様々ですが、本日は具体例として、(1)おばあちゃんが認知症に(2)夫がうつ病に かかってしまったケースをお話しします。
ケースA:おばあちゃんが”認知症”に
おばあちゃんは物忘れが徐々に進行していましたが、病気で入院後、入院したことが分からない、夜になると落ち着かない、など症状が悪化してしまいました。退院はしたものの、介護する人は夜も眠れない状況です。
ケースB:夫が”うつ病”に
夫が昇進して帰りが遅くなり、疲れがたまっている。休日出勤も頻繁で、次第にやつれてくる。疲れているのに眠れない日が続き、死にたいと言うようになる。メンタルクリニックに行ったらうつ病と言われ、3か月休む事になった。症状が改善しないので、さらに3か月休むよう言われた。このままでは会社を首になってしまう。妻として、どうしてよいかわからない。
ここで社会的背景に触れておくと、長寿化、少子高齢化、老々介護などがあります。無論長寿社会は良いことですが、一方、少子高齢化で「支える人」が相対的に減っており、介護負担が増しています。
2.”支える苦労”の中身について
“支える苦労”の中身を考えてみれば、その中には減らせる”苦労”があるかも知れません。
■認知症について
認知症の症状には、中核症状と周辺症状があります。
中核症状とは物忘れなどをさしますが、残念ながら中核症状はもとには戻りません。しかし、周辺症状は回復する可能性があります。
周辺症状としては、被害妄想、せん妄などがあります。 せん妄とは、夕方になると様子がおかしくなり始め(日内変動)、夜は眠らず、落ち着かない、しかし翌日にはその事を忘れてしまっている状態です。せん妄は適切な対応で元に戻る可能性があるのです。
せん妄(夜になると落ち着かない)などの周辺症状は、クリニックに相談すると薬を処方してくれます。ところが睡眠薬を出されると夜よけいに騒いでしまう事があるので、せん妄を抑える薬を使います。正しい診断をしてもらうためにも、夜の状態を医師に伝える事が大事です。
 一方で、中核症状である物忘れへの対応は、「しっかりしてよね」と言われると本人は傷つくので、同じことを繰り返し言われても、受け流しながら付き合わざるを得ません。
■うつ病について
 うつ病は、タイプ部・回復期別に対応の仕方が異なります。それぞれに合った対応をすることは、支える側の負担の軽減につながります。
①典型的(従来型)うつ病
「眠れない、食べられない、だるい・・・」などの身体の症状が毎日続き、「疲れているのに眠れない」、「睡眠薬を飲んでも眠れない」など強度の不眠に悩まされます。
②現代型(新型)うつ
ストレス要因が大きく、比較的、若い人に多いと言われます。たとえば、就職して仕事が厳しくストレスがたまり、平日は体調が悪いのですが、週末は普通に生活できるので、はたからは怠けているように見える事があります。女性の場合、子育てと仕事の両立が厳しくてストレスがたまってうつに至る、というケースも多いです。この現代型うつは、ストレスの解決方法がみつからないとなかなか回復しません。
③躁うつ病
うつ病への対応としてよく言われている「励まさない」というのは①典型的うつ病のケースで、回復には少なくとも1〜2か月はかかります。
一方で②現代型うつの場合には、どうやってストレスを乗り越えていくのかが大切です。例えば会社の上司に状態を理解してもらいながら、リハビリして行く方法があります。症状が出ている時にいきなり叱咤激励することは逆効果ですが、ストレスの原因を明らかにし、自分で頑張るべきところについて「励ます」ことはあり得ます。
このように、うつ病のタイプ・回復期によって対応は異なりますので、うつ病治療で医者にかかる時は、家族も同行し、うつ病のタイプを知り、今どういう時期か確認する(急性期かリハビリ期か)事が大事です。そして、家族はどう対応したら良いのか具体的に聞くのが良いでしょう。家族が病状を知ることが、「支える人」の負担を減らす事につながります。
3.支える人がまいってしまわないために
キーワードは「睡眠」と「つながり」です。これは支える人、支えられる人ともに大切です。
(1)睡眠
①支えられる人
認知症でもうつ病でも、昼夜のリズムを作ることがとても大事です。夜は眠れる状態をつくらないと、支える皆さんがまいってしまいます。 せん妄が起こっていたら、医師に相談しましょう。
②支える人のメンタルヘルス
支える人が、自分もうつになりそう、と心配になる事もあるかもしれません。このポイントの一つがやはり睡眠。 眠れない日が続いている場合、うつ病になりかけている可能性がありますので、心配な時は自分の事を医師に相談しましょう。自分自身が休める時間(睡眠時間)を作れるかどうかが重要です。
(2)つながり
①孤立化の悪循環
認知症もうつ病も、回りとのつながりが減ることで、孤立化して行く事があります。どんどん自宅に閉じこもるようになり、支えられる人と支える人が家庭内で二人だけの世界になるととても辛い状態になり、家族関係もギクシャクしてきます。これが「孤立化の悪循環」です。
②支えられる人、支える人ともに”つながり”を大切に
 家に閉じこもりにならないよう、”つながり”づくりを心掛けましょう。デイサービスやショートステイ、訪問看護などを利用する事で、支えられる人が外の人達と触れ、なおかつ支える人がゆっくりできる時間を作る事です。仲の良かった人に来てもらうのも良いでしょう。また、支える人は介護などのために仕事を辞めて”つながり”を断ってしまうのではなく、週1回でも働くなど、意識的に外とのつながりを保つようにすることが気分転換になります。一生懸命やる人ほど行き詰まってしまうケースもあります。
4.最後に
家族全体として幸せになる、自分自身も幸せになる事が大事です。支える人がリフレッシュできて明るい表情となれば、明るい気持ちは認知症の方にも伝わっていくのです。
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休憩をはさんで第二部は、「稲木良光とロイヤルジャパンアンサンブル」による生演奏。「稲木良光とロイヤルジャパンアンサンブル」のみなさんは、県内で活躍されるプロの音楽科で、年間110回以上の演奏会などで活躍中です。この日は、電子ピアノ、コントラバス、バイオリンによる演奏で、参加された方はゆったりと聞き入っていました。
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演奏する稲木良光とロイヤルジャパンアンサンブルのみなさん

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