~ここにこんなボランティアが・・・~ 風の電話の物語 開催報告
2月25日(水)午後3時より、ALWFロッキーセンターにて『風の電話の物語』を開催しました。
(主催:(公財)静岡県労働者福祉基金協会(ライフサポートセンターしずおか)・NPO法人静岡県ボランティア協会/後援:静岡県・静岡市・静岡市社会福祉協議会・(一社)静岡県労働者福祉協議会・静岡県労働金庫・全労済静岡県本部・生活協同組合ユーコープ 参加者:96名)
講師には岩手県大槌町にお住いの佐々木格さんをお招きしました。
佐々木さんは、勤めていた会社を早期に退職し大槌町へ移住。自宅の庭に『ベルガーディア鯨山』をオープンさせました。そして2011年3月11日、東日本大震災。突然の大きな揺れ、逃げ惑う人々。地震、津波、火災と次々に迫りくる恐怖。逃げ場のない状況の中で、人々は何を思ったのか・・・。当時の惨状を思い返し、佐々木さんは声を詰まらせます。
震災の被害はそれだけではありません。助かった人々を次に襲った『グリーフ』。『グリーフ』とは、深い悲しみや悲嘆を意味し、大切な人を失った時に起こる身体的・精神的な変化をあらわすもので、『どうして家族を助けられなかったのか、どうして自分だけ助かってしまったのか』などの自責の念に駆られ、当時、災害地では、言葉を失い、表情を失い、自分の中に閉じこもる人々が増えたのだそうです。
「自分の力でここまで生きてきた」と自負していた佐々木さんですが、震災を機に『自分は、何か見えない大きな力で生かされた。何のために生かされたのか。何をすべきか。』と考えるようになり、グリーフケアの一環になればとの思いから『風の電話』が生まれたと言います。
「『風の電話』は電話線がつながっていません。ですが、『話したい』という強い想いから、訪れる方々が後を絶ちません。大事なのは自分の見方・考え方。『つながる』という想いがあれば、そこに小さな希望や夢が生まれる。そして、『風の電話へ行ってみよう』と自分で行動すること、その『意思』がグリーフ状態から抜け出す一歩になるのです。」と佐々木さんはお話しされました。
『風の電話』ボックスの中には、訪れた人が自由に書き込むことができるノートがあります。このノートを、佐々木祐子さん(奥様)が読んで下さいました。当初は『深い悲しみ』しか感じられなかったメッセージも、震災から4年が経った今では、前向きなメッセージも覗えてきました。
また、佐々木さんは、「子供の育つ環境は、その後の人間形成に大きく関係してきます。」と、被災地の子供達をとても心配されています。震災後、環境が変わってしまった子供達のために、自らが学び取ることができるようにと自宅の庭で無農薬野菜を栽培したり、流されてしまった図書館の代わりになればと、『森の図書館』を作りました。
「子供達には、見える物・聞こえる物だけでなく、見えない物・聞こえない物も含め、全てにおいて物事を判断できる、本質を見極められる大人になって欲しい。」と佐々木さん。復興支援の歌『花は咲く』の中にある、『いつか生まれる君に わたしは何を残しただろう』というフレーズにふれ、「今を生きている私達は、亡くなった方・これから生まれてくる子供達に対し、生きている責任があるのです。」と話し、講演を締めくくりました。
最後には、『風の電話』のエピソードをきっかけに生まれた絵本「かぜのでんわ」を、読み語りなどのボランティア活動をされているフリーアナウンサーで、ヴォイス・セラピー実践研究家でもある上藤美紀代さんが朗読して下さいました。会場は静まり返り、参加者は切ない内容に耳を傾けていました。
ライフサポートセンターしずおか